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天井
2019/07/16

「特定天井」の基本を徹底解説、建築士が抑えるべきルートとは?!

高谷裕美
MakMaxプラス

「特定天井」の定義をご存知でしょうか。

未だ記憶に新しい東日本大震災では、建物の天井落下による大きな被害が各所で相次ぎました。 これを受けて国土交通省が、天井に関する新たな安全基準を設けました。 この基準の対象となる構造の天井───それが特定天井です。

本稿で特定天井の詳細についてわかりやすく説明し、対応方法と解決策までご紹介します。


特定天井とは

以下に定義される天井のことを、特定天井と呼びます。

 

特定天井の定義

「脱落によって重大な危害を生ずるおそれがある天井」のことで、次のすべてに該当するものが特定天井です。

  • 吊り天井(直天井は特定天井に該当しない)
  • 天井の高さ:6m超
  • 面積:200㎡超
  • 質量:2kg/㎡超
  • 人が日常利用する場所に設置されている

体育館や空港など、大型の施設で該当する場合が多い天井です。


 

特定天井が定められた背景

2011年に発生した東日本大震災において、吊り天井の落下被害が大きかったことを受けて、政府は吊り天井の耐震性に見直しの必要があることを確認しました。

そして2013年、この見直しをまとめたものとして、国土交通省より天井脱落対策にかかわる技術基準告示『国土交通省平成25年告示第771号』他が公布され、2014年に施行されました。

国土交通省平成25年告示第771号と、それにより一部改定された建築基準法施行令 第三十九条の内容は、それぞれ以下のとおりです。

 

国土交通省平成25年告示第771号

これまであった『建築基準法施行令第39条』に第3項を追加し、大臣が指定する「特定天井」については次の事項を制定・改定する、というものです

  • 建築基準法施行令第39条第3項の規定に基づき大臣が定める技術基準に従って脱落対策を講ずるべきこと

  • 時刻歴応答計算等の構造計算の基準に天井の脱落対策の計算を追加する等の改正

建築基準法施行令 第三十九条

  1. 屋根ふき材、内装材、外装材、帳壁その他これらに類する建築物の部分及び広告塔、装飾塔その他建築物の屋外に取り付けるものは、風圧並びに地震その他の震動及び衝撃によつて脱落しないようにしなければならない。

  2. 屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造は、構造耐力上安全なものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。

  3. 特定天井(脱落によつて重大な危害を生ずるおそれがあるものとして国土交通大臣が定める天井をいう。以下同じ。)の構造は、構造耐力上安全なものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

  4. 特定天井で特に腐食、腐朽その他の劣化のおそれのあるものには、腐食、腐朽その他の劣化しにくい材料又は有効なさび止め、防腐その他の劣化防止のための措置をした材料を使用しなければならない

さらに詳しく見る場合は、国土交通省の発行する資料をご覧ください。『国土交通省告示第771号

 

特定天井に該当する場合、どうしなければならないのか

既存の建物の天井が特定天井に該当する場合、あるいは新築で計画中の建物の天井が特定天井にあたる場合、定められた対策が必要です。


その対策とは、「新たに定められた基準を充たすことを検証し、安全性を対外的に証明すること」です。 対策は既存建築と新規建築で異なり、とくに新規建築では3つの検証方法があります。



*引用:国土交通省資料

 

既存建築物の場合

次のような「天井が損傷しても落下しないような措置=落下防止措置」を講じる必要があります。

  • ネットの設置
  • 天井をワイヤー等で吊る

新築建築物の場合

中地震(震度5弱~5強)で天井が損傷しないことを検証して、安全性を示す必要があります。具体的には「ルート」といわれる3つ検証方法のうち、いずれか1つを適用します。 3つの「ルート」について、詳しくは次のとおりです。

 

検証方法1:仕様ルート

その名のとおり、構造的な仕様で一定の基準を充たすことにより、落下の危険性を軽減する方法です。 天井の仕様を耐震性等を考慮したものに適合させて安全性を検証します。 詳しくは、国土交通省の資料に記載されている次の図をご確認ください。


 

検証方法2:計算ルート

構造上、仕様ルートの適用が難しい場合に、告示で定める計算によって天井の耐震性等を検証する方法です。 詳細な計算方法は、『国土交通省告示第771号』の記載をご確認ください。

 

検証方法3:大臣認定ルート

複雑な構造を持つ天井などは、仕様ルートや計算ルートに適合しない場合があります。 このときに、天井の安全性・耐震性等を、個別の実験や数値計算によって検証する方法が、「大臣認定ルート」です。 これまでに事例は少なく、初の大臣認定はニュースにもなりました。

初の事例のニュース:日経新聞『サントリーホールが特定天井で初の大臣認定取得

 

「膜天井」というソリューション

特定天井のままでは、新基準によりこれまでと比較して対応にコストが増加するだけでなく、やはり耐震性・安全性に不安が残ります。

地震大国とも呼ばれる日本においては、安全策を講じ過ぎるということはありません。 大空間であっても特定天井に該当せず、高い安全性を持つ天井構造として「膜天井」があります。

軽い・柔らかい・強い、という特徴を持つ膜天井は、吊り材が不要であり、室面積や天井高さに制限されることなく大空間をデザインすることができます。


 

軽い:落下しても被害が少ない

膜材料の質量は、わずか約600g/m²です。 従来の天井材に比べて軽量で、万一の落下時にも室内の人々や物品に与えるダメージを最小限にとどめることができます。

 

柔らかい:変形や衝突に強く、揺れにくい、落ちにくい

薄く柔らかな膜材料によって、天井が大きな揺れにも変形追従が可能な構造となり、落下の危険性は極めて低くなります。 さらに、高い柔軟性によって室内の意匠性も大幅に高めることができます。

 

強い:落下物を受け止める

厚さわずか1mmの極めて薄い素材ながらも、落下物を受け止める強度があります。
体育館等、特に面積が広く天井が高い大型の建築には、耐震安全性の高い膜天井が注目されています。

膜天井について詳しくは、「膜天井とは」をご覧ください。

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