地震による天井脱落を未然に防ぐ!最新の耐震天井をご紹介
高谷裕美
大きな地震が発生したとき、建物の中で特に大きな被害をもたらす危険性がある部材が「天井」です。
東日本大震災の九段会館の事故のように、天井が脱落することで下にいる人がケガをしたり、最悪の場合亡くなってしまったりするケースが多くあります。
また、政府・地震調査委員会が平成30年6月に公表した「全国地震動予測地図2018年版」によると、今後30年以内に震度6弱以上の大きな地震が発生する確率は、横浜市、千葉市では80%を超えています。東京、大阪、神戸、埼玉でも50%前後の確率とされています。
建物の安全性を守るため、地震発生時の天井脱落の危険性と、その対策、さらに各社の事例についてご紹介します。
地震発生時における天井脱落の危険性とは
大型の建物では、天井に「吊り天井」という構造が多く用いられています。屋根裏にあたる部分から金属ボルトなどで格子状の枠を吊り下げ、そこに天井材を張り付けるのが吊り天井です。
天井裏のスペースを活用して様々な機能を持たせられるメリットがある一方、細い金属で重い天井材をぶら下げる構造のため、地震の揺れに対して弱く、建物の構造によっては天井脱落の危険性があります。
東日本大震災において天井脱落による被害が大きかったことを受けて、政府は吊り天井に対して新たに安全基準を設けました。
吊り天井を「軽くする」か、「脱落しないように補強する」ことを求めたのです。このうち、天井材が落ちないよう補強することでも天井脱落のリスクを小さくすることはできますが、かえって危険性が増しているという見方もあります。万が一、天井が脱落した場合、補強材の分の重量が増しているためインパクトが大きくなるからです。
天井脱落対策として新たに設けられた安全基準と特定天井について
政府が新たな安全基準を求めた吊り天井のことを「特定天井」といいます。特定天井とは「脱落によって重大な危害を生ずるおそれがある天井」のことで、次のすべてに該当するものが、これにあたります。
- 吊り天井(直天井は特定天井に該当しない)
- 天井の高さ:6m超 •面積:200㎡超
- 質量:2kg/㎡超
- 人が日常利用する場所に設置されている
特定天井について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
『「特定天井」の基本を徹底解説、建築士が抑えるべきルートとは?!』
新築・既存を問わず、建物の天井が特定天井に該当する場合、新たに定められた安全基準を充たすよう証明するか、天井の構造を変更する必要があります。既存の建物の場合、改修となります。その方法が、上述の「軽くする」もしくは「脱落しないように補強する」です。特定天井の安全性の確認について、詳しくは下図をご覧ください。
各社による天井脱落対策・耐震天井の例
天井の脱落を避けるためにさらなる安全性が求められる中で、天井の施工に携わる各社から様々な提案が生まれています。
桐井製作所:耐震 Power天井
施設の用途に合わせた天井の耐震化ができる安全性の高い天井下地工法です。
引用:https://www.kirii.co.jp/products/ceiling/taishin-power.html
三洋工業:SZⅡ特定耐震天井
東北地方太平洋沖地震後、建築基準法の改訂により定められた「特定天井」の、最大震度数における脱落対策に対応した耐震天井です。
引用:http://www.sanyo-industries.co.jp/products/env/sz01_1.html
NIKKEI PANEL SYSTEM:耐震天井NEQRES® ネクレス
平成26年4月の建築基準法施行令改定に合わせ、新たな耐震基準の適合したパネル仕様の耐震天井。
引用:https://www.nikkeipanel.co.jp/products/earthquake-resistant/
OKUJU:耐震天井下地 OSシーリング
国土交通省告示“特定天井”に対応 【耐震天井下地部材】。大地震時における天井材の脱落被害に対する、天井下地補強対策“OSシーリング”です。
引用:https://premium.ipros.jp/okuju/product/detail/2000136312/
この他に、天井材の軽さを求めた商品も多く生まれています。軽量天井の事例紹介については、下記の記事おをご参照ください。
天井の脱落を防ぐ工法や天井材は多岐にわたり、日本の建物の地震に対する安全性は少しずつ高まってきています。選択肢は数えきれないほどありますが、数ある天井脱落対策のうち、特におすすめなのが「膜天井」を用いる方法です。
天井脱落のリスクを軽減する「膜天井」というソリューション
特定天井にも該当せず、万一の脱落時にもリスクを低減でき、独自のデザイン性を実現できる天井構造が膜天井です。
膜天井は、大空間であっても特定天井に該当せず、重い補強材も必要ないため高い安全性を持ちます。
軽い・柔らかい・強い、という特徴を持っており、吊り材が不要で、室面積や天井高さに制限されることなく大空間をデザインすることができます。
膜天井について詳しくは、こちらのページをご覧ください。
関連記事
見て体感!AR機能も搭載のECサイトが誕生
- 作成者 :
- 高谷裕美
コロナ禍でも必要な「防災・減災・感染症対策」製品をオンラインで理解~商談~購入までサポート 2021年1月14日 <報道用資料> 太陽工業株式会社 大型膜面構造物(テント構造物)や各種災害対応製品などを扱う太陽工業株式会社(東京本社:東京都世田谷区、大阪本社:大阪市淀川区、社長:荒木秀文)は、この度、コロナ禍でも緊急性や社会ニーズの高い「防災・減災・感染症対策」製品を取り揃え、AR(拡張現実)やオ...
もっと読む
避難所や病院でのスペース対策!屋内の空間を区切り、安心・安全を実現する「屋内制御マク」
- 作成者 :
- ミライ工事
新型コロナウイルスなどの感染症に対応するため、動線分離する「エアーテント」の設置や、それに陰圧設備を付与した陰圧テントの設置など、病棟外に簡単に素早く設置できる様々なテントが注目されています。 一方で、今後、経済活動を再開していくにあたり、医療施設に加えて、 工場など大きな空間内を、より簡単に仕切ることによって 働く人の安全・安心を守る場を確保することも重要です。 そこで活用いただきたいのが、空間...
もっと読む
法面保護に効果的なコンクリートキャンバスとは
- 作成者 :
- 高谷裕美
「法面」とは切土または盛土によってつくられた人工的傾斜面のことです。山がちで雨の多い日本において常に不安定かつ脆弱性を持ちます。 法面は崩壊リスクと隣り合わせで、その表面の浸食や、崩壊を抑止するために法面の保護工事や補強工事が必要です。しかし、その工法はそれぞれ一長一短があります。 今回はさまざまな法面保護工事の施工方法と、新しい解決策についてご紹介します。 【目次】 1 法面保護工とは 2 法面...
もっと読む
天井構造の仕組みと種類を詳しくご紹介
- 作成者 :
- 高谷裕美
「天井」について深く考える機会はあまりないかと思いますが、その奥は深く、様々な構造や機能などがあります。 特定天井、耐震天井、吊り天井、直天井───湿度・温度調整、防音、明るさの確保、ホコリの落下防止───。天井の構造について全体を理解し、安全で機能的な天井を実現できるよう、必要な知識を簡潔にまとめました。 【目次】 1 おもな天井の構造:直天井と吊り天井 2 天井構造の種類 3 気を付けたい耐震...
もっと読む
エクセルに負けない!工事写真台帳と報告書のレイアウトで自動調整したい5つのポイント
- 作成者 :
- ミライ工事
エクセルはオフィスに広く普及し、表計算以外にも、様々な場面で活躍しているソフトです。ネット上には様々なテンプレートがあり、仕事に便利な環境が整っています。 工事写真台帳や点検報告書の編集でもエクセルを利用されている方は多いのではないでしょうか。しかし、エクセルは、デジカメ利用とメールでのやり取りを前提としたシステムになってしまいます。編集の度に写真を貼り付けたり、台帳の編集が終われば、ファイル送付...
もっと読む