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屋根
2020/09/02

<ニッサン パビリオン> ETFE膜構造で表現する「人とクルマの未来」

高谷裕美
MakMaxプラス

photo by 加藤順平

2020年8月、横浜みなとみらい21地区。日産自動車グローバル本社にほど近い場所に期間限定の体験型のエンターテインメント施設<ニッサン パビリオン>がオープンしました。この施設は「人間の可能性を拡張する」をキーワードに、日産が描く近未来の暮らしを最新のデジタル技術やアトラクションによって体感できる、おとなから子どもまで楽しめる場所です。このプロジェクトに当初から関わり、パビリオンのデザインを主導した日産自動車グローバルデザインセンターの櫻井浩之氏。そして建築の立場から共にプロジェクトを歩んだ当社建築事業統括本部の2名を交え、竣工に到るまでの軌跡を振り返ってもらいました。

photo by Hisashi Sato
(左から太陽工業/藤木、櫻井浩之氏、太陽工業/名波)

櫻井浩之氏 (日産自動車グローバルデザイン本部 アドバンスドデザイン部)
藤木和孝(太陽工業建築事業統括本部プロジェクト営業課)
名波紳二(太陽工業建築事業統括本部プロジェクト営業課)

櫻井浩之氏

photo by Hisashi Sato

櫻井浩之(さくらい・ひろゆき)
1981年京都府生まれ。2007年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。
2007年から2013年までTEAMIWAKIRI。2013年から日産グローバルデザイン本部。

 

日産自動車のデザイナーが自ら手がけたパビリオン

「日産自動車のデザイナー自らがデザインしたこのニッサン パビリオンは、最先端のテクノロジーや革新的な商品を通して、日産が描く未来のモビリティ社会を、見て、感じて、ワクワクしていただける場所。このパビリオンでご体感いただける数々のテクノロジーは、日産の“挑み続ける精神”の一端です」 オープニングセレモニーで日産自動車の内田誠社長兼CEOはニッサン パビリオンをこう表現しました。この“挑み続ける精神”を櫻井氏はどのように建築デザインに落とし込んで行ったのでしょうか。

櫻井浩之氏(以下:櫻井) 「計画がスタートしたのは2018年の終わりぐらいです。2020年に最新テクノロジーを搭載した新型車*発表が予定されていて、それに合わせて新ブランドロゴマークの策定を中心とした新たなブランドイメージの構築・発信計画が進んでいました。その一環として日産が考えるモビリティの未来を発信できる拠点、『お客様に直接訴え、感じていただける場が必要』ということで計画されたのがこのニッサン パビリオンです。当然、このパビリオンはブランドイメージ計画と一対の存在ですから、デザインの方向性も同じところに向かわなくてはいけません。新しいブランドロゴマークが車体エンブレムや広告を通じ『これからの日産』を表現するのに対し、このニッサン パビリオンは建物、展示内容を通して、いかにそれを的確に発信していけるかが大きなテーマでした」
*新型クロスオーバーEV「ARIYA」

藤木和孝(以下:藤木) 「最初に見せていただいたデザインのプロトタイプは透明な球体のようなイメージでした。かなり大きな衝撃を受けたのを覚えています」

櫻井 「完全な球体ではなくて少し潰れた卵のような形で、柱がない透明な空間に人とクルマがあるというイメージですね。あくまでも人が中心にいて、その暮らしを支えるテクノロジーとしてクルマが寄り添う。そんな世界感を柔らかな曲面や透明な素材で表現できないかと考えたのです」

新しいブランドロゴマーク等が形になっていくのに合わせ、櫻井氏はパビリオンのデザインに検討を加え、現在の形に行き着きます。当初の球体とは異なりますが「デザインの根底を流れる想いは変わっていない」と言います。

櫻井 「パビリオン全体のデザインのモチーフとなっているのは<光るリング>。これは新しいブランドロゴマークのデザインに共通するものです。このブランドマークは新しいものである一方、創業当初からの理念である『至誠天日を貫く』=『強い信念があればその想いは太陽をも貫く(必ず道は開ける)』という想いを継承しています。見ていただければ分かりますが、従来のロゴマークが硬質でメタリックな印象であったのに対し、新しいロゴは私たちが考える『これからのモビリティのあり方』の象徴として、柔らかく軽やかな印象を際立たせたものになっています。このロゴマークが固まってからは、この中に私たちの思いを凝縮させるということで、デザインの方向性も完全にこの形にフォーカスしました」

名波紳二(以下:名波) 「光るリングをモチーフにしたファサード。そのエントランスからパビリオンに入った瞬間、もしかしたら多くの方は意外な印象を持たれるかもしれませんね。自社のラインナップがずらりと並ぶ、いわゆる自動車メーカーが自車をPRする場とは明らかに趣が異なる空間がそこに広がっていますから」

櫻井 「中心に人々が集うカフェを置く。広い中庭には自然の緑、白石、芝生などを配し、一方、展示ブース内の壁面スクリーンには最新技術を用いたインスタレーションが展開する。そして中庭〜ブースをぐるりと回る形で最新のクルマが実際にそこを走る。私たちが表現したかったのは、こうしたテクノロジーと自然、人がしっかりと共存する、これからの社会のあり方でした。『この最新の車はすごいでしょ』と技術を一方的にPRするのではなくて、『私たちの考える、これからの人とクルマの関係はこうです』というものを見せ、体験してもらえる場にしたかった。真ん中をカフェにしてオープンなゆとりの空間をつくったのは、まさにその想いを象徴するもので、あくまでも人、コミュニティが中心にあってはじめて社会が成立する。革新的なテクノロジーが人を支配するのではなくて、そこに寄り添う、という想いを示したかったのです」

名波 「今回のプロジェクトの特徴として忘れてはいけないのが、アウトソーシングに頼らず、櫻井さんをはじめとした日産社内のデザインチームが一からデザイン計画をまとめたことにありますね」

櫻井 「はい。こうした想いを形にできたのも、デザイン計画を自分たち自身で手がけたことが大きいと考えています。もちろん建築家、イベント関係の専門家の方は多くの知見を持ってらっしゃるわけですが、結果として自分たちの手でデザイン計画を徹底的に考えて行ったことで、すごくピュアな私たち日産の想いをこの場に表現することができたと思うからです」

 

総合的に考えるとETFE以外の選択肢はなかった

光るリングに込められた日産の想い。パビリオンのデザインとしてそれを印象的に表現しているのが前面をぐるりと囲む曲面状のファサードでしょう。これを構成しているのがETFE膜構造です。

櫻井 「プロトタイプで球体のデザインを考えてから、一貫して曲線的なデザインがコンセプトにはありました。最初の画を描いた段階で『ガラスで表現できるのかな、いやさすがに難しいだろうな』などと考えている中、太陽工業さんに『こういう形を表現したい』と相談させていただき、全体のコストや納期等を総合的に考えると『ETFEで検討して見てはどうでしょう』という提案をいただいた。そこがスタートでした」

藤木 「最初に出てきたデザインを見せていただいたときは、正直度肝を抜かれたというか、相当驚きました。どうやったらこれを実現できるのか、と。たしか櫻井さんは『ガラスでこういう形が表現できますか』とおっしゃったと思うのですが、ガラスでは櫻井さんのイメージしている柔らかさの表現は難しいと思い、私たちとしてはかなり早い段階から『ETFE膜構造しかないだろう』と考え、実際にご提案させていただきました」

櫻井 「そうですね。私自身はETFEについてすごく知識があったわけではないのですが、ユニクロ心斎橋店さんの例は知っていましたし、その他に海外のスタジアム等の事例などを調べていく中で『ああこれなら自分たちの考えていることが実現できるかもしれない』と思うようになりました」

名波 「たとえばビニール素材のようなものも考えられたかもしれません。しかしそれだと仮に形はつくれても、櫻井さんの考えていらした世界観には程遠い、どこか安っぽいものになってしまったと思います。その点からも『ETFEは最適解だった』と私たちは考えていますが、櫻井さんには妥協していただいた部分もあるかもしれません」

櫻井 「結果的に考えるとこうした三次元的な丸みのあるファサードを表現できて、決して長くはない工期に収めることを考えた時、他の選択肢はなかったと思います。もちろんそれはコストや時間だけでなくデザインや演出面から見てもです。膜材ってすごく面白くて、このパビリオンは時間によって見え方がまったく変わります。昼間の太陽光があたっている時は閉じられた空間のようで、朝の低い光の時間帯は中の様子がフワーっと透けて見える。夕刻に陽が落ちてくると後ろのビルが透けて見え、完全に陽が落ちて夜になると中のスクリーンに映るインスタレーションが見えてきて、その印象がガラリと変わる。こうした光の当たり方、時間によって表情を変えるETFE膜の特性は、私たちが考えていた世界観にとても近いものでした」

photo by Nacasa&Partners

 

「建築」と「イベント」2つのタイムラインの存在

実際の施工にあたっては何より「時間」が大きな課題だったと言います。計画スタートの段階でオープンまで2年を切っており、デザインの方向性が決まり最初の建築申請が出されたのが昨年の9月。その後も展示内容の変更に合わせて計3回の申請変更が行われました。

藤木 「今回のプロジェクトを建設の立場から見た場合、大変だったのは展示内容の変更に対して、いかにフレキシブルに建築として対応できるかということでした。たとえばわずかな展示内容の変更であったとしても、それがお客様の動線や出入り口に関わってくると、建築側としては申請を出し直さなくていけません。日産自動車さんとしてはこのパビリオンは全社的なイベントで、新しいブランドイメージを発信する重要な場ですから、最後の最後まで展示内容を良くしよう、良いものをつくろうと粘り強くやられるのは当然です。私たちに課せられたのは、そうした貴社の想いに、どれだけついていくことができるかでした」

名波 「ほんの少しの変更が建築サイドとしては大きなハードルになることは意外と多いですね。貴社の想いを理解して最善の策を追求しながらも、『建築としてはもうここがタイムリミット』という場面もあります。そのバランスを正しく判断することが建築サイドのマネジメントにとって大きな課題でした」

櫻井 「たしかに見せる内容は変わっていなくて、シアターの座席配置を変えたい、スクリーンを少し移すという程度の変更でも、建築的にはそれが動線や入り口などに影響してくることもありますからね。本当に最後まで頑張っていただきました」

藤木 「実際、『もうここで決めていただかないと間に合いませんよ』と強く申し上げたこともありました。今年3月が最後の申請変更でしたが、実際はその段階でもまだ展示内容が最終的に詰められていない部分があって、でも申請を出すにはこのタイミングしかない。あの時は本当にギリギリでした(笑)」

櫻井 「今回のパビリオンは建築とイベントという2つのタイムラインが並行して走っていたと思います。実はこれはレアなケースで、モーターショーや本社イベントスペースでの催しの場合などは、タイムラインはほぼイベントのものしかありません。『建築タイムライン』と『イベントタイムライン』をどう合わせていくか。かなり無理を言わせていただいたことは十分承知の上で、少しだけ言い訳をすると(笑)。イベントのタイムラインは近年かなりタイトで厳しくなっています。情報といえば、かつては新聞やテレビといった既存メディアのみでしたが、最近ではSNSに代表されるネットメディアの影響が大きくなっていて、ある一つの情報で情勢が大きく変わり、方針をガラッと見直さなくてはいけないという自体も起こり得ます。昨今のコロナ対応などは、その一つの代表例かもしれません。変化を正しく見極め、その上でギリギリまで最善の方法を模索する。できる修正は最後まで行う、というのがイベントタイムラインの現状なのです」

 

VRテクノロジーを導入 意思決定の場にも用いる

櫻井氏は今回のプロジェクトに最新のVRテクノロジーを使った新しい試みを導入しました。この取り組みはデザインチーム内の情報共有はもちろん、経営サイドの意志決定にも大きく役立ったと言います。

櫻井 「今回CADデータを3D化するとともに、VRツールを使いビジュアルイメージを動的に可視化させ、擬似体験できるようにするという試みを導入しました。一つにはデザインチームの確認や情報の共有化いう面がありますが、同時に私たちはこれを役員会でのプレゼンテーションにも持ち込みました。完成パースをいくつか見せて『こんな風になります』、『夜はこんなイメージです』と説明するのに比べてはるかに具体的で、イメージを正しく理解してもらえますし、仮に修正指示があった場合も互いがニュアンスで理解するのではなく、ピンポイントで具体的な情報共有ができていますから齟齬が起こりにくい。修正など作業面から見ても大きく効率化がはかれました」

藤木 「今回のプロジェクトでは細かなディテールもVRに取り込みましたね。私たちに対してもETFE膜の膨らみ方や光の透過具合、芝生の位置、植栽の形など、かなり細かいオーダーをいただきました」

櫻井 「ファサードに膜材を使用して、光の条件によって見え方が変わりますと説明しても、それをイメージだけで理解するのはなかなか難しいですよね。今回は御社からいただいたデータを取り込んで、かなり詳細に可視化できましたのでデザインチーム内、社内での情報共有はもちろん、特に意思決定プロセスで使えたのが大きかったと思います」

名波 「具体的に意思決定プロセスにおいてVRが果たした役割にはどういったことがあったのでしょうか」

櫻井 「詳細で具体的なイメージを提示することで『このパビリオンは投資に見合うだけのインパクトが本当にあるのか』という判断がより的確にできるということです。特にパビリオンのような体験型空間の場合、2Dの情報で判断するのとVRによって動的なイメージを体験したのとでは、判断材料となる情報量が全く異なります。エントランスからブースまでのアプローチはどうなっているのか、展示ブース内に入ってインスタレーションはどのようにお客様の目に映るのか。こうしたディテール部分を説明によって理解してもらうのと、体感した上でジャッジするのとでは大きく違いますから」

名波 「確かに今まではある程度形ができるまでは体感で判断することはできなったわけで、特に細かなディテールに関しては、なかなか伝わりにくい。けれどそのディテールこそが、実は大きなポイントだということもあるでしょうからね」

櫻井 「そうです。たとえば私たちの新しいロゴはデジタルアプリや動画アプリ、さまざまな媒体やデバイス上で表示されることが想定されています。ロゴ自体がまるで生きているかのように見え、それは『絶え間なく変化する環境に対応し、ワクワクする魅力を持ち続けるしなやかさ』を表すデザインメッセージでもあります。同じことはこのパビリオンにも言えて、光の状態によって変わるファサードの表情、場の空気感などは、細かなディテールであるとともに重要な演出であり、メッセージでもあります。最近私の中では、そうした『ソフトに変化するディテール部分の意識共有が、デザインを考える上ですごく重要になってきている』という問題意識が強くあって、だから今回VRの導入も、単に効率化のみを期待していたわけではないのです」

藤木 「ディテールブ部分の意識共有という点では、私たち施工サイドも櫻井さんたちが考えているイメージをより具体的に理解できたという面でVRの存在は大きかったですね。あのビジュアルデータがあったおかげで、ゴールを正確に共有できましたから。」

櫻井 「それと今回VRを導入したことで面白かったのは、建物ができて行くにつれ、自身がつくり上げた頭の中のイメージとはまた違った、既視感を常に感じたことですね。『初めてこの場に立った感じがしない』という。これはちょっと不思議な経験でもありました」

photo by Nacasa&Partners

 

クルマのデザイン、そのこだわりを建築の世界と融合する

大きな全体コンセプトはもちろん、細部のディテールにも徹底してこだわる。太陽工業の2人の担当者はこのニッサン パビリオンを通して「車の世界におけるデザインの価値観、こだわりの姿勢を知れたことが大きな経験になった」と振り返ります。

名波 「たとえばファサードのETFE膜を支える構造フレームですが、『膜の連続性にこだわりたい』というご要望から、ETFE膜のクッションパネルのジョイント部は、目地カバーが入りますが、今回は28.5㎜巾を採用しました。 通常は100㎜巾なのを、極限まで細く目立たないようにしました。また、この分割部のアルミ金物はH鋼のウェブ内に設置し、外から金物が見えないように工夫しています。 細かいディテールに積み上げで連続性損なわない美しいファサードデザインを 実現することが出来ました。 これはクルマの世界の細部にこだわるデザイン感を建築の世界に持ち込み 融合していただいた結果だと思いますし、妥協を許さない櫻井さんの 熱意のおかげと感謝しております。」

藤木 「そうですね。照明の配線周りもアルミ型材内に通せ、ETFE膜に空気を送る配管も地中部の柱縦材間に配置でき、結果、出ているのは送風用のポンプのみ。結果、外・内両方ともきれいな膜の連続性を表現できましたが、その出発点は櫻井さんたちの『見せる』、『見せ方』へのこだわりでした」

櫻井 「たしかに車のデザインは、コンマ5ミリの段差を収めるために多くの人が関わり、ものすごい時間をかけて細かいディテールを突き詰めて行く世界です。一方で建築も細部へのこだわりはありますが、アプローチは車とは異なりますし、それは当然のことだと思います。ただこのパビリオンに限らず、私たち日産が手がける以上、あくまでも日産の考えるデザインアプローチにこだわりたい、そういう想いは常にあります。実際にはその折り合いはすごく難しい部分もあるのですけれど。今回、このニッサン パビリオンは、そうした想いが良いバランスで実現できたのかな、と思っています」

藤木 「もちろん私たちも膜材にシワがよらないようきれいに納める。そうしたことはこれまでも十分に意識を高く持ってやってきましたが、今回、櫻井さんとのお仕事を通じ、クルマの世界が考える「きれい」という概念、ディテールへのこだわりを肌感覚で知れた。それは貴重な経験でしたね」

photo by 加藤順平

 

ニッサン パビリオンから与えられた膜構造への宿題

「やりたかったイメージはほぼ実現することができた」という櫻井氏ですが、今回、ETFE膜を使ったことで、デザイナーとして「これができれば」というさらなる要求はなかったのでしょうか。最後に膜建築の可能性を含めてお聞きしました。

名波「たとえば櫻井さんはファサードの構造フレームについても『ソリッドな形状ができないか』というお話をされていました。いろいろと検討した結果、現在の形になったわけですが、この他、今回のプロジェクトを経て『膜材でこれが実現できたら』と感じた部分はありますか」

櫻井「いろいろな諸条件をクリアして行く中で、今回のニッサン パビリオンに関しては、今できるベストを実現できたと思っています。ただもちろん『こうしたい』っていう欲求はデザイナーとして常にあります。今回のファサードで言うと、膜材の上下の透け加減をグラデーションにできたらまた違った表現が可能かなと思いますし、NISSANの社名ロゴも細かなドットで印刷処理できていたら、どうなったのだろうとも考えたりはします」

藤木「ドットでの印刷処理はプロジェクトの過程で実際にお話をいただき、当社としてもさまざまに検討しました。結論から言うと技術的には可能でしたが耐候性の面で確証が得られませんでした。日産さんが社運をかけてやってらっしゃるプロジェクトで、まさか会期中に社名ロゴが薄くなっていくなんてことはあってはならないですから、今回に関しては確実性、安全性を取らせていただきました。ただ実際に海外では事例もありますし、今でもチャレンジする価値はあったかもしれないとも思っています。これはいただいた宿題として、印刷、プリント技術の研究をメーカーとともに進めていくことをお約束したいと思います」

櫻井「そういう細かで特殊な印刷が可能になってくると、膜を使った表現もさらにバリエーションが出てきますね。今回、膜を使った建築デザインを経験して、そのソフトで威圧感のない特徴は時代との親和性がすごく高いと思いました。ファサードの膨らみなどは空気を使って表現しているわけで、当然、鉄などの鋼材と違って重厚感がなくとても軽やかです。少ない材料でフレキシブルなデザイン、空間をそこにつくれますからね」

名波「櫻井さんから最初に見せていただいた球体のデザイン。あの大きな空間を限りなく少ない部材で構成するというのは、私たちに課せられた一つの大きな課題だなと思っています。『ほぼやりたいことはできた』とおっしゃっていただきましたけれど、膜建築の可能性を追求していく上で、櫻井さんの提示していただいたあのイメージは、未来の進むべき方向として、私たちの頭の中に入れておかなくてはいけないものです」

藤木「そうですね。膜と最小限の柱、そこに空気の力を使って空間を構成する。櫻井さんからは膜がめざす『未来の建築』というお題、私たちの目指すべき一つのテーマをいただいたと思っています」

櫻井「たとえば膜構造建築は持ち運ぶ、移設ということも容易ですよね。ヘビーなものを一度そこに建てて終わりではなくて、すごく軽やかでフレキシブルに変化できるっていうのは時代の方向性でもあると思います。それはクルマと社会の関係性にも底辺で通じる部分があるのかもしれません」

ニッサン パビリオンの開設期間は10月23日まで。パビリオン内は「THE THEATER」・「THE LIFE」・「THE CITY」・「NISSAN CHAYA CAFE」の4つのエリアで構成され、それぞれに日産の先進技術を駆使した仕掛けが施されています。今回のインタビューに出てきたさまざまなデザインのこだわり、膜構造がつくりだす世界観を、ぜひ実際に現地を訪れ、体験して見てはいかがでしょう。

詳しい情報は下記をご参照ください。
https://www.nissan.co.jp/BRAND/PAVILION/

 

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