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屋根
2020/12/07

"膜製"スノーシェルター登場 冬の道路の安全は膜で守る

高谷裕美
MakMaxプラス

山間部のトンネル間などに設置されるスノーシェルターは突風、横風などを抑え、冬季には路面凍結や積雪の影響を抑え、ドライバーの安全を守る施設です。太陽工業はこのスノーシェルターに膜構造を応用。軽量性、明るさ、耐久性、環境性能といった膜の特徴を活かし、冬の道路の安全を守ります。

 

 

北海道の自動車専用道路に国内初の膜製スノーシェルター

スノーシェルター外観

冬場の高速道路での代表的な事故要因に急な路面変化があります。山間部のトンネルが連続する地域ではトンネルとトンネルの間に吹き溜まりが発生し、積雪や凍結といった路面変化が起こりやすく、ドライバーが急ブレーキを踏むなど車の制御を誤る事故例が報告されています。こうした冬場の道路の安全を守る施設としてスノーシェルターがあります。トンネル連続区間の橋梁部などに屋根を架け、雪の侵入や凍結を防ぐもので事故防止に大きな効果を上げています。

 

鋼製シェルター(滑雪用SUSプレート付)同等の活雪性能を確認 耐塩害性、メンテナンス性を評価

2018年12月に開通した北海道の後志自動車道(NEXCO東日本)の余市IC〜小樽JCT(全長23.3km)は、区間中の橋梁数12橋(合計3.2km)、トンネル8本(合計8.4km)と全体の半分が橋とトンネルによって構成されています。吹雪、濃霧による視程障害対策のための自発光スノーポール(LED照明)の設置など、北海道ならではの安全対策が各所に施されているなか、第一天神トンネルと第二天神トンネル間の恩根内橋には、全国の高速道路として初めて膜製スノーシェルターを設置。従来の金属に変わる新しい建材による道路設備として注目を集めております。

恩根内橋の全長は58m。この区間は冬場の降雪量が多く、除雪や排雪作業が渋滞要因となるほか、ホワイトアウト(吹雪などによって視界が真っ白になる現象)の発生による事故発生の危険があるため、当初からスノーシェルターの設置が検討されました。その際、全長をすべてシェルターで繋いでしまうと、2本のトンネルとシェルターは一本の連続する長大トンネルと見なす事となり、建築コストを大きく引き上げてしまいます。そこでこの現場では、スノーシェルターとスノーシェッド(側面開口型の雪避け屋根)を組み合わせ、空気がこもらない対策を施し、規格上それぞれが別々のトンネルとなるよう設計計画が練られました。

当初、鋼製シェルターの導入が検討されたなか、最終的に膜材が採用されたポイントは、施工全体までを含めたコスト面で膜材が有利だったことにくわえ、特に耐塩害性能優位性が評価されたといいます。 具体的には融雪剤の影響です。道路の雪を溶かす融雪剤の主成分は塩化カルシウム(CaCl2)。凝固点がマイナス50℃と温度の低い地域でも溶雪効果を発揮する一方、塩化物は錆や腐食要因となるため、道路施設、特に鋼製シェルターなど金属構造体に与える影響が課題とされてきました。これに対して樹脂製の膜は塩化物が付着しても錆や腐食の心配がなく、シェルター全体に金属構造体が占める割合も少ないため、メンテナンスなどのトータルコストを考えた場合、鋼製に対しきわめて優位であると判断されたのです。

このほか採用にあたっては膜構造の安全性、信頼性が十分に検証されていることは言うまでもありません。 たとえばシェルターの設置にあたっては橋梁に与える荷重負担。なかでも積雪荷重の軽減が重要となります。シェルター形状は天頂部に突起がある玉ねぎ型が採用されていますが、この形状は単純なアーチ構造に比べて雪が滑り落ちやすく、屋根に堆積しにくいことが鋼製製品で実証されています。今回、この形状のシェルターに膜材を採用するにあたっては、建築の実績物件の冬季観察により、膜材には鋼製スノーシェルター(ステンレスプレート付き)と同等の活雪性能があることが認められています。
強度、耐衝撃、耐燃性といった各性能についても、下記に示したような厳しい条件でのテストを実施し、高い安全性、信頼性が求められる高速道路設備に用いられる素材として、膜材が十分な性能を有していることが確認されています。

 

視認性向上による、運転者のストレス軽減 一般道でも期待される膜の効果

膜製スノーシェルターの設置は高速道路だけではありません。降雪地帯の一般道路に設置することで、道路の安全性、事故抑止などさまざまな効果を発揮します。 特に既存の鋼製シェルターとの比較で大きく異なるのがその明るさです。膜の透光率は約13%。日中はシェルター内に自然光をふんだん取り込むため、鋼製シェルター比べ視認性は格段に向上します。ドライバーが微妙な路面の変化をいち早く認識でき、速度を緩めるなど的確な安全操作を取ることで事故の可能性を大きく軽減します。

また膜材を通過した光は柔らかな拡散光となります。極端なコントラストの少ない光はドライバーの視界に優しく、トンネル入口で、内外の照度の差が大きいために発生する「溶け込み現象」や、出口で急に太陽光が差し込み一瞬視界を失う「蒸発現象」を抑える効果もあります。何より人工照明下となるトンネル区間での連続した運転は、ドライバーのストレスとなります。その意味でも雪の侵入や路面凍結を抑えるシェルターとしての基本性能にくわえ、膜が持つ明るさは道路の安全を考えた時、重要なファクターの一つになることは間違いないでしょう。

 

電力消費削減にも貢献 膜と照明による情報提供機能なども

鋼製スノーシェルターの場合、日中から照明の点灯が必要となりますが、膜は日中は、極端な日陰などでなければ照明なしで一般道の走行にはほぼ支障のない明るさが確保できます。くわえて膜は光の反射率も高いため、夜間照明を効率的に反射させ道路を照らします。膜の持つ明るさ、その透光性能、反射性能は施設全体の電力消費量削減にも貢献します。

一方、膜は照明との親和性が高いことも大きな特徴の一つです。夜間、照明が点灯するとその光がシェルター全体を行灯のように照らし、昼間とはまったく違う意匠を浮かび上がらせます。この特性を利用し商業施設ではイベントや催事に合わせた照明計画などが実施されています。道路の場合にはまず安全性の確保が最優先となりますが、それを担保した上で、たとえば街おこしや地域イベントとの連動、時間や季節に合わせた照明の変化。さらには膜をサイネージとして利用し、渋滞情報、道路工事情報などドライバーへのさまざまな情報提供ツールとして利用するといった可能性も考えられます。

>>膜構造で美観と長寿命化を実現 橋梁のアンチエイジング技術

 

軽量、柔軟な素材特性がもたらす 高い耐震性と経済性

膜のもう一つの大きな特徴がその軽量性です。スノーシェルターに使用される膜材の荷重は約1kg/m2と、金属素材などに比べ大幅に軽量となります。さらに膜材には揺れに追随する柔軟性があります。このため鋼製シェルターなどに比べ下部構造体に与える負荷が小さく、施設全体の耐震性能が大きく向上します。

シェルターの設置にあたっては荷重に耐えるため、道路の補強等が必要な場合も出てきます。しかし膜製シェルターは金属等に比べ軽量なため、追加補強を最小限に抑えることができます。

特徴の一つがその軽量性です。TMトラスで形成された屋根構造体の重量は一般鉄骨構造の約半分。このため少ない柱で大空間を覆うことができ、空間を最大限に有効活用できるほか、万一の地震等の場合でも、揺れによる下部構造への影響が大きく抑えられるため、倒壊や破損等の危険性が極めて少ないという、高い安全性能を持っています。

くわえて膜製スノーシェルターは、工場製造の膜パネルを取り付ける施工方法で、1パネルが大きいため、現場施工の工期短縮につながるという特徴があります。使用する重機等の量も少なく、効率的で短期間の施工となるため、道路の通行制限など施工にともなう周辺への道路影響を最小限に抑えます。

 

光触媒で自動クリーニング 沿岸道路の塩害対策も万全

道路上に屋根を設置。それが膜材となると、汚れや経年変化による劣化を懸念されるかもしれません。しかし使用される膜材は酸化チタンによる光触媒機能を備えているため、排ガス等で付着した汚れも自動的に分解・除去し、透光性能等の明るさを長期間にわたって維持します。くわえて光触媒には車の排ガスに含まれる有害物質NOx(窒素酸化物)も分解・除去(膜材1000m2につき1時間あたりNOx1.2g)する働きも備えています。

また維持メンテナンスにおいては、融雪剤の例で示したように、膜材は塩化物に対して強いという特徴があります。特に沿岸部においては海風等の影響で塩化物が付着、それが深刻な腐食原因となり防食塗装や定期的な塗り直しなどが必要となりますが、非金属素材である膜製シェルターならば、それら塩化物対策のコストを大きく削減することができます。

 

まとめ

道路設備における膜素材の利用というと、かつてはSA、PAの大型屋根や料金所の屋根施設などが一般的でした。しかし最近では今回ご紹介したスノーシェルターのほか、半地下道の車路における眩光対策用のディフューザー、橋梁の維持と美観を整備する<橋梁ラッピング>、<膜式点検足場>など多彩な用途へと拡がりをみせています。柔軟性、軽量性、安全性、環境性能などを考えた時、道路分野での膜の持つ可能性は現状にとどまるものではありません。太陽工業は膜の可能性をさらに追求し、道路の安心・安全向上に貢献していきます。

 

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