テント倉庫の建築確認について理解を深める
高谷裕美
現在、テント倉庫は、そのメリットから様々なシーンで利用されています。
- 設計から施工まで短い納期で導入が可能
- 低コストでの建設が可能
- 内部空間が明るい
特にこの3点については、他の建築工法と比べて際立っており、各社におけるテント倉庫導入の決め手となっています。
しかし、一定以上の規模のテント倉庫については建築確認申請が必要になります。
また消火設備の設置が義務付けられるなど追加の費用が発生するケースがあることをご存知でしたでしょうか。
この記事では、テント倉庫の導入において建築確認申請が必要なケースと、テント倉庫が建築物として最大限の緩和措置を受けられる条件について整理します。
テント倉庫とは
テント倉庫とは、金属の骨組みに膜材(生地)を被せて設置する『膜構造』という構造をもつ、テント状の倉庫建設物のことです。
膜材の特徴・特性により、主に以下のようなメリットがあります。
- 工期が短い
- 採光性が高く、倉庫内が明るくなるため節電にもつながる(白系膜材の場合)
- 壁や屋根に錆が発生しない
- メンテナンスが容易
- サイズのバリエーションが豊富で様々な用途に対応する
- 柔軟で地震に強く、万一落下があった際も被害を最小限に抑えられる
- 『二重膜システム』を用いれば定温倉庫としても使える
- 『多雪地域向け仕様』なら寒冷地の積雪にも耐えられる
- 不燃膜材を用いれば、防炎・防災効果も高い
このような優れたメリットを持つことから、従来の倉庫に代わって各地・各社で導入が進んでいます。
テント倉庫は建築確認が必要か
面積が10㎡以上の建築物を設置する場合は、建築基準法の定めにより、特定行政庁か民間の建築確認検査機関への建築確認申請を行う必要があります。
テント倉庫も、建築基準法上は通常の建築と同様の扱いであるため、建築確認申請を行う必要があるということになります。
建築確認を行わずに10㎡以上のテント倉庫を設置した場合、違法建築に該当し、処罰・撤去の対象となりますので、設置を計画する際には正しく認識しなければなりません。
また、以下のような一定規模以上のテント倉庫を計画される際には、消防法に基づいて消火設備も用意しなければなりません。
- 500㎡未満=消火器
- 500㎡以上=消火器 火災報知器
- 700㎡以上=消火器 火災報知器 屋内消火栓
さらに、倉庫内で可燃物などを保存する場合は、内容物により扱いが異なる場合がありんますので、計画時に所轄の消防署への確認が必要となります。
建築確認申請の書類一式
では、10㎡以上のテント倉庫においては一般の建築物と同じで、低コスト・短工期という優れた特徴を発揮することはできないのでしょうか。
そうではありません。
次に、テント倉庫において法規定の緩和措置が受けられる条件をご紹介します。
建築物として緩和処置が取られる条件がある
『国土交通省告示667号』に定められた条件を満たす場合、固定式テント倉庫や伸縮式(蛇腹式)テント倉庫のようなテント倉庫の建設に際して必要な建築確認における規定の緩和措置が受けられるケースがあります。
667号の適用条件とは、主に以下の4点です。
- 延べ面積1000㎡以下の膜構造建築物であること。
- 屋根(切妻・片流れ・円弧)と壁を持ち、階数が1階のみであること。
- 地面から軒までの軒高が5m以下であること。
- 膜材料は、けた行き方向に3.0m以下の間隔で鉄骨造の骨組に定着させること。
国土交通省告示667号
そして667号が適用された場合、以下の緩和措置を受けることができます。
1.設計風速の低減が受けられる。(基準風速の0.8倍もしくは28m/秒の大きい値)
2.構造計算書の妥当性に関する適合性判定(ピアチェック)が不要となる。
これらの緩和措置の適用によって、テント倉庫は一般の建築物と比べて低コスト・短工期を実現することができます。
ただ、テント倉庫が緩和措置の対象であるかを判断するためには、厳密には上記の4点以外にも細かな確認ポイントが存在します。
この確認には専門的な調査が必要になりますので、実績と知見のある事業者へ依頼することが一般的です。
太陽工業であれば、トータルサポートも
創業約100年を誇るテントのプロフェッショナルである太陽工業株式会社では、テント倉庫の建築確認申請をはじめとする、専門性の高い法的手続の代行も承っており、設計、製作、施工、検査までもワンストップにて対応致します。
全国に営業拠点がありますので、場所を問わず担当者を派遣した現地調査や打ち合わせが可能であり、一貫して行政への対応までも完全サポートいたします。
※当社テント倉庫の実績はこちらから
また、自社工場と研究所を保持していますので、「短工期」「低コスト」に加え、用途に合わせた「高品質」もご提供できます。
建設後のアフターフォローについても万全です。膜材劣化診断のサービスや補膜の更新(張替)工事はもちろん、リニューアルも承っておりますのでお気軽にご相談下さい。
まとめ
低コスト・短工期のテント倉庫は、法律上は一般的な『建築物』と同じ扱いであるため、一定規模以上での設置にあたっては、建築確認申請をはじめとする各種の手続と対応が必要です。
ただし、『国土交通省告示667号』に定められた条件を満たすことで、一般的な『建築物』よりもはるかに低コスト・短工期を実現できます。
当社のテント倉庫とサービスについては、こちらのページをご覧ください。
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