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農水省の『産地生産基盤パワーアップ事業』を活用して農家が収益向上を実現する方法

「高価な機械や施設が導入できれば、もっと収益が上がるのに…」
「農業用ハウスを再整備して、次世代に継承したい!」

そんな農業者の方に知っていただきたい制度があります。 『産地生産基盤パワーアップ事業』という助成金制度をご存知でしょうか?

「助成金」というだけで苦手意識を持たず、ぜひこの記事に目を通してみてください。 収益向上のヒントを詳しく、かつ簡潔に、お伝えいたします。

【目次】

1.産地生産基盤パワーアップ事業とは?
2.産地生産基盤パワーアップ事業の3つの対策方針
  2-1.新市場獲得対策
  2-2.収益性向上対策
  2-3.生産基盤強化対策
3.手続きの流れ
4.活用例
5.まとめ

産地生産基盤パワーアップ事業とは?

収益の向上、もしくは生産基盤の強化を目指す農業者を金銭的に補助してくれる農林水産省の事業のひとつが『産地生産基盤パワーアップ事業』です。 高性能な機械や施設を導入したり、栽培体系の転換したり、堆肥の活用による土づくりをしたりする取り組みに対して、その費用の一定額を助成してもらうことができます。

取り組みの内容に応じて以下の3つの方針に分化しており、それぞれに対象や条件などが異なります。

  • 新市場獲得対策
  • 収益性向上対策
  • 生産基盤強化対策

この記事では、それぞれについて詳しく内容を確認し、最後に手続きまでの流れや実際の活用事例をご紹介します。

産地生産基盤パワーアップ事業の3つの対策方針

3つの対策方針は、それぞれに助成対象となる事業内容や、助成金の補助率、採択要件などが異なります。各々について整理しましたので、ご自身のケースに当てはまるものがないか確認してみてください。

新市場獲得対策

新市場の核となる拠点事業者の育成や、食品関連事業社などの拠点事業者と連携することによる農業者の生産体制・出荷体制の強化を目指し、施設整備等の費用を助成してくれるのが『産地生産基盤パワーアップ事業』のうち『新市場獲得対策』です。 ハード面、ソフト面ともに補助の対象となっており、たとえば以下のような取り組みに対して支援を行ってくれます。

【ハード】

  • 国産冷凍野菜向け加工施設の整備
  • 輸出向けコールドチェーンの整備
  • 加工業務用青果物向け貯蔵施設の一体的整備 など

 

【ソフト】

  • 農業機械等の導入及びリース導入
  • 労働力不足等に対応した労働力調整体制の確立
  • 生育予測システム等の導入 など

支援対象となる取組

以下に記述する『協働事業計画』に位置づけられており、海外や加工・業務用等の新市場獲得を目標としていることが支援対象となる条件です。

(出所:農林水産省ホームページ)

協働事業計画の概要

協働事業計画は、以下のような流れで作成を進めます。

① 次の3つの機能を備えており、生産支援等を行う拠点事業者と連携する農業者等のグループを形成する。

  • 生産安定・効率化機能
  • 供給調整機能
  • 実需者ニーズ対応機能

② 次の2点を満たす目標を設定した、3箇年以内の計画を作成する。

  • 総出荷額に占める輸出向け出荷額の割合を年平均1ポイント以上増加
  • 総出荷量に占める加工・業務用向け出荷量の割合を年平均3ポイント以上増加、かつ目標年度までに輸出向け取組を開始

③ 農林水産省生産局長の承認

支援対象者

  • 上記の協働事業計画に位置付けられた拠点事業者
  • その連携者(農業者、民間事業者など)

補助率と上限

補助率

  • ハード:1/2以内
  • ソフト:1/2以内等

上限

  • ハード:20億円
  • ソフト:5000万円

収益性向上対策

その名のとおり、収益力強化を目指して計画を立て、この実現に向けて取り組む農業者に対して、必要な農業機械の導入や集出荷施設等の整備にかかるコストを助成してくれるのが『収益性向上対策』です。

たとえば、以下のような活動に対して、一定の割合で資金的に補助をしてくれます。

  • 農産物処理加工施設や低コスト耐候性ハウス等、産地の基幹的な施設の整備
  • 農業機械のリース導入・取得
  • 生産資材の導入

後述する基準を満たした『成果目標』を定め、かつ『面積要件』等を満たしている主に2点を条件として、支援の対象になります。

支援対象者

地域農業再生協議会等が作成する『産地パワーアップ計画(収益性向上タイプ)』に参加する農業者や、以下のような農業者団体が対象になります。

  • 農業協同組合
  • 農事組合法人
  • 農地所有適格法人
  • その他農業者が組織する団体

なお、個別経営体も参加が可能です。

成果目標

産地全体で、次の7つのうちいずれかに該当する目標を設定し、それを実現するための計画を策定して、かつ実行する必要があります。 機械や設備の導入を行う農業者や農業団体の目標ではなく、産地全体の目標である点に注意が必要です。

  1. 生産コスト又は集出荷・加工コストの10%以上の削減
  2. 販売額又は所得額の10%以上の増加
  3. 契約栽培の割合の10%以上の増加かつ50%以上とすること
  4. 需要減が見込まれる品目・品種から需要増が見込まれる品目・品種への転換率100%
  5. 輸出実績がある場合は、輸出向け出荷量又は出荷額の10%以上の増加
  6. 輸出の新規取組又は直近年の輸出実績がない場合は、総出荷額に占める輸出向け出荷額の割合5%以上又は輸出向けの年間出荷量10トン以上
  7. 労働生産性の10%以上の向上

面積要件

面積要件は品目ごとに個別に定められており、さらに一定条件の下では例外的な要件緩和策も設けられています。 たとえば、中山間地域等において事業を実施する場合は、以下の表に記載のとおり面積要件が緩和されます。

(出所:農林水産省ホームページ)

詳しく確認したい方は、農林水産省の『問い合わせ窓口』までお問い合わせください。

なお、面積要件に関しても、上述の成果目標と同様、機械や設備の導入を行う農業者や農業団体などの取り組み主体が個別に満たすものではなく、産地全体に求められる要件であるという点に注意して確認を進めてください。

以下の図を参照すると分かりやすくイメージすることができます。

(出所:農林水産省ホームページ)

支援対象となる取組

主に『整備事業』と『基金事業(生産支援事業・効果増進事業)』の2つに定義され、例として以下のような取り組みが、助成の対象として設定されています。

【整備事業】

  • 乾燥調製施設の整備
  • 穀類乾燥調製貯蔵施設の整備
  • 集出荷貯蔵施設の整備
  • 農産物処理加工施設の整備
  • 生産技術高度化施設(低コスト耐候性ハウス等)等の整備

【基金事業(生産支援事業・効果増進事業)】

  1. コスト削減に向けた高性能な農業機械のリース導入・取得
  2. 雨よけハウス等、高付加価値化に必要な生産資材の導入
  3. 果樹の競争力のある品種について、同一品種での改植 等

(出所:農林水産省ホームページ)

補助率

補助率は、上記の取り組みごとに異なる設定がされています。 それぞれについては、以下のとおりです。

  • 『整備事業』:1 / 2以内等
  • 『生産支援事業』の①農業機械のリース導入・取得:本体価格の1 / 2以内
  • 『生産支援事業』の②生産資材の導入:1 / 2以内
  • 『生産支援事業』の③改植:定額

補助率

補助率は、上記の取り組みごとに異なる設定がされています。 それぞれについては、以下のとおりです。

  • 『整備事業』:1 / 2以内等
  • 『生産支援事業』の①農業機械のリース導入・取得:本体価格の1 / 2以内
  • 『生産支援事業』の②生産資材の導入:1 / 2以内
  • 『生産支援事業』の③改植:定額

生産基盤強化対策

生産基盤の強化や継承、全国的な土づくりの展開を目的とした活動を支援してくれるのが『生産基盤強化対策』です。
たとえば、以下のような取り組みを助成してくれます。

  • 農業用ハウスや果樹園・茶園等の再整備や改修
  • 生産基盤を次世代に円滑に引き継ぐための継承ニーズのマッチング
  • 農業機械のリース導入・取得
  • 土づくり等の取組

採択要件としては、『収益性向上対策』と同様に基準を満たした『成果目標』を設定することに加え、継承に必要な再整備や改修に取り組む場合においては『5年以内に譲渡する計画があること』、もしくはすでに譲渡を受けている場合は『これから本格的な営農を開始する計画があること』が求められます。

支援対象者

地域農業再生協議会等が作成する『産地パワーアップ計画(生産基盤強化タイプ)』に参加する農業者や、以下のような農業者団体が対象になります。

  • 農業協同組合
  • 農事組合法人
  • 農地所有適格法人
  • その他農業者が組織する団体

支援対象となる取組と補助率

これも『整備事業』と『基金事業』に分けて対象を設定しており、具体例としてそれぞれ以下のように定められています。

【整備事業】

  • 新規就農者や担い手への継承に必要な低コスト耐候性ハウス等の再整備

【基金事業】

  1. 新規就農者や担い手への農業用ハウス譲渡のためのパイプハウスの再整備・改修
  2. 譲渡された果樹園・茶園で営農を開始するための果樹園・茶園の再整備や改修
  3. 後継者不在の農地等での生産機能の継承を目的とした作業受託組織等での農業機械の再整備・改良
  4. 再整備・改修した施設・果樹園等の継承ニーズの把握及びマッチング、受け皿組織における継承までの間の維持に必要な備品、生産資材の購入
  5. 生産技術を継承・普及するための栽培管理・労務管理等の技術実証、農業機械の安全取扱技術向上のための研修
  6. 牛ふん堆肥及びペレット堆肥等の実証的活用に向けた実証ほの設置 等

各取り組みにおける支援内容は補助率は個別に設定されているため、その一例を記した表を以下に添付します。 なお、記載はあくまで一例であり、詳しい支援内容や補助率を確認したい方は、各都道府県の担当窓口に問い合わせる必要があります。

(出所:農林水産省ホームページ)

産地生産基盤パワーアップ事業の手続きの流れ

いずれの対策方針を利用する場合でも、『産地生産基盤パワーアップ事業』に手続きを行う場合は以下の流れに従うことになります。 ステップが多く複雑に見えますが、主には『計画提出⇒交付申請⇒助成金交付』というシンプルな流れです。

  • ①対象者が『取組主体事業計画』を作成する
  • ②地域農業再生協議会等に、事業計画の相談と提出を行う
  • ③協議会から都道府県に対して事業計画の相談と提出がなされる
  • ④都道府県から国や基金管理団体に事業計画の相談と提出がなされる
  • ⑤~⑦国⇒都道府県⇒協議会⇒対象者に、事業計画が承認される
  • ⑧対象者から都道府県に対し、交付の申請を行う
  • ⑨都道府県から国や基金管理団体に対し、交付の申請がなされる
  • ⑩~⑪国や基金管理団体から、都道府県を通し、対象者に助成金が交付される

(出所:農林水産省ホームページ)

産地生産基盤パワーアップ事業の活用例

少ない農薬で育てた新品種「天のつぶ」を中心にオンライン販売を手がける福島県の米農家様は、テント作業場の導入に助成金を利用しました。テント作業場内には穀物乾燥機を設置し、お米の選別に活用しています。

この乾燥機は、地域全体の効率化を図るために複数の農家様で共有されています。米農家の経営者が音頭を取って近隣の若手農家を中心に集めて団体として申し込むことで、単独では利用できない『産地生産基盤パワーアップ事業』の助成金の対象となりました。 設置に際して設計事務所は通さず、地元の電気設備会社が間に入って進められました。設備の共有による作業効率アップはもちろんのこと、周囲の農家様がこの場所に集まることでコミュニケーションも活発になり、地域活性化に寄与しています。

まとめ

この記事が助成金に対する理解を深め、苦手意識を解消することにつながれば幸いです。
事業の発展のため、日本の農業の興隆のため、ぜひ助成金を役立ててください。

交付金の対象になる商品については、太陽工業株式会社にお問い合わせください。
>>太陽工業株式会社│総合お問い合わせ

助成金の制度に関しては、農林水産省にお問い合わせください。
>>『農林水産省 問い合わせ窓口』

産地生産基盤パワーアップ事業以外にも、複数の農業関連の助成金が存在します。
こちらの記事に概要をまとめていますので、ぜひご覧ください。
>>『農業経営者必見の助成金制度3選 │ あなたももらえる助成金まとめ』

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