MakMaxプラス

膜屋根がつくる、新しい農業施設コミュニティ施設としても機能する街のランドマーク「森町ラボラトリー」。

森町ラボラトリー

「森町ラボラトリー」。それは新しい農業施設。
外観から内観まで、おしゃれで明るい雰囲気が広がり、社員たちの仕事へのモチベーションを高めている。
その魅力はとどまることなく、地域の人々も巻き込んだワークショップやイベントなど、新しい試みまで開催。
森町全体を盛り上げたい、そんな強い思いまでもが込められている。
本プロジェクトにプロジェクトマネージャーとして携わった盛永 健太郎(以下:盛永)に話を聞いた。

 

盛永 健太郎(もりなが けんたろう)
建設営業統括本部 建築営業本部 名古屋営業部 名古屋営業1課 2016年入社

逆境の中で一歩を踏み出した。
佐野ファームが描くのは、 “新たな農業の未来を切り拓く”こと。

太陽工業にとっての新たなストーリーが、佐野ファーム様の一通のメールから始まった。
彼らは新型コロナウイルスの影響を受けながらも、この逆境を未来への跳躍台に変える決意を秘めていた。
盛永はその熱意を受け、農業の世界という未知のフィールドに一歩踏み出した。

盛永:
トウモロコシの産地として名高い静岡県周智郡森町。この地域に深く根を下ろす佐野ファーム様は、トウモロコシをはじめ、レタス、トマト、ルッコラといった有機野菜を育て、市場へと送り出す農業法人。隣接する磐田市に工場を構え、惣菜製造・販売を手がける株式会社ロック・フィールドへは、玉レタスやグリーンリーフ、サニーレタスなどの高品質レタスを卸し、それらはデパ地下で人気のブランド「RF1」で、サラダや惣菜となり提供されています。

しかし2020年以降、新型コロナウイルスのパンデミックによりデパ地下の賑わいは一変。佐野ファーム様は「この問題を解決しなければならない」という不安に打ち勝つため、以前から計画していた第六次産業化への転換を加速させる決断されました。

そのタイミングで、経済産業省の「再構築補助金制度」という追い風もあり、採択されれば最大で最大6,000万円の支援が可能となる好機に恵まれたことも動機づけに。

当初、佐野ファーム様は地元の工務店に相談されましたが、金額やスケジュールについて折り合いがつかず、断念。太陽工業にファーストコンタクトがあったのは2021年4月のことです。ホームページで紹介している膜の体験施設である「マクマックス フレックス エクスペリエンス センター(MakMax Flex Experience Center、以下:FEC)」のデザインに関心を持ち、メールでお問い合わせをいただきました。

新規問い合わせは、当社のホームページを通じて寄せられることはありましたが、多くは製造業や物流業界からの相談、地元の工務店からの紹介でした。農業というこれまで経験のない分野に対しても魅力を強く感じ、迷うことなく一度お話しをお聞きしようと、佐野ファーム様のもとを訪れました。

未知を解き明かす、革新の共創。
かつてない領域への扉を開く、太陽工業の新プロジェクト。

佐野ファーム様への訪問は、盛永にとって新しい扉を開く一歩。
今までにない形でのコラボレーションの可能性を確信させるものだった。
このストーリーが始まったのは彼が入社して5年目の春のこと。
当時彼は静岡県の浜松営業所に配属されていた。

盛永:
私が訪れた頃は、トウモロコシ栽培の繁忙期。しかし、そんな忙しい時期にも関わらず、社長をはじめ、その奥様である専務、さらにこのプロジェクトに意欲的に取り組むご息女が、歓迎の意を示してくださいました。

この時すでに「事業再構築補助金制度」が視野にあったことで、核になるビジョンは描かれていて、それは、自社の食品加工場とコミュニティを融合させた施設をつくるというもの。第6次産業化を目指して、収穫した野菜を使ったサンドイッチやお菓子作りや、自社で育てた野菜を洗い、カットし、パッケージに詰める作業、さらには地元の農家の収穫した野菜の後処理を支援するといった、多角的な事業展開のプランが固まっていました。

新食品施設の名前も「森町ラボラトリー」と決まっていて、まるで研究所のように、新しい挑戦を繰り広げ、多くの人々を巻き込んで森町全体を活性化させたいという強い願いが込められていました。

私は地元の工務店との折り合いがつかなかった予算や建築期間のスケジュールなど、プロジェクトの細部にわたる詳細を把握し、その意義や規模を深く理解するために、丁寧なヒアリングを重ねました。

普段はテント倉庫のセールスとして、鉄骨や膜の本体工事、基礎工事の請負いなどが主な仕事です。ヒアリングを重ねる中で、このプロジェクトではもっと幅広い提案が求められていることを感じました。電気工事、消防工事、設備工事、給排水工事、内装工事に至るまで、建築工事一式で請負う提案は私個人としては初めての経験です。そのすべてに応えるべく、全力を尽くす覚悟をここで決めました。

春の訪れと共にスタートした盛永の挑戦は、ただの工場を建てる以上のことを目指す壮大なプロジェクトだった。
入念に考察して練り上げた計画は、お客様の心を掴みながら、農業の未来に新しい可能性をもたらした。
どんな障害が立ちはだかろうとも、このプロジェクトを成功させるという揺るぎない決意は、
目標達成への新たな動力となろうとしていた。

盛永:
6月、このプロジェクトは始まりました。私には佐野ファーム様の働く環境を一新し、労働効率を飛躍的に向上させるこという大きな目標がありました。水が絶えず流れる部屋では、耐水性を備えた材料選びと精緻な排水計画が必須であり、食品を扱う空間では防虫対策を忘れてはなりません。さらに設備が組み込まれる過程では、配管設計に一段と緻密さが求められ、電力を大量に消費する場面においては、キュービクルの設置は不可欠。ガスの利用有無、建物の床レベルをどのように微調整するかも、考えどころでした。ユニバーサルデザインを踏まえた導線設計となると、細部にわたる注意が必要で、わずか一つの仕様が変更になると工事内容やコスト管理を一層難しくしてしまう。そのようなことを招かないことも課題の一つでした。

提案書には、目で見てイメージを掴めるようビジュアル表現を心がけ、清潔感あふれる白を基調としたデザインや、重厚感溢れる黒をまとった堅牢な建造物の提案を織り込みました。どちらも可能性を秘めたデザインで、お客様の心に新しいビジョンを描き出すことの手助けになったようです。

熟考の末に練り上げられたこの提案書は、建物全体の構造から細部の動線に至るまで、隅々にこだわりを表現していました。佐野ファーム様からは「ここまでしてくれるの?」と驚かれ、その瞬間から信頼を得ることができたと感じました。

困難を解決するごとに、強まるチームの結束。
家族や友人の支えも、前へ進む力に。

補助金申請の成功は、単なる資金調達を超えた意義を持つことに。
それは佐野ファーム様との共同の夢が承認されるということで、努力が形となった瞬間だった。
盛永自身の「森町ラボラトリー」への思いがあったからこそ、課題も乗り越えられた。
さらには盛永が成長するための貴重な学びの場ともなった。

盛永:
プロジェクトは順調に進行しているように見えましたが、真の試練はこれからでした。補助金の申請期限が迫る中で、私たちは緻密な計画と迅速な行動で対応することで、佐野ファーム様との絆を深め、共に夢を描く関係へと発展させていました。

こうした夢を描く過程で、佐野ファーム様の「森町ラボラトリー」に対する思いは日に日に膨らんでいきます。このままでは建築費は増加、建築期間は延長になってしまう、これではいけない、佐野ファーム様の思いを可能な限り決まった予算と工期で実現するための調整を行いました。

試行錯誤はあったものの、結果的に補助金の申請は通過し、補助金を獲得することができました。この時私が感じたのは、これは単なる資金面での支援ではなく、私たちと佐野ファーム様の夢に対する共同の承認だったこと。私は建設プロジェクトの各段階で、直面する問題や困難に立ち向かい、変化を恐れず柔軟に対応することの大切さを学びました。

迫り来る課題の壁を前に、チームは一丸となり、
予算の制約、短期間での納期、そして多岐にわたる要求を力強く乗り越えた。
盛永はプロジェクトマネージャーとしてチームを統括し、
紆余曲折を経験しながらも、メンバーを共通の目標に向かって導いた。

盛永:
補助金の承認が進んだものの、それでも、その先には多くの障害が待ち受けていました。予算の制約、短期間での納期、各部署からの多様な要求といった課題です。

このプロジェクトは、基礎工事から設備、内装に至るまで、多くの専門チームの力が必要でした。チームの異なる意見を統一するために、全体のコスト管理、デザインや設計の調整は不可欠です。さらに、食品を取り扱う場所であるため、衛生面に特に重点を置かなければならず、食品衛生法、菓子製造業の届出に関連する法規、HACCP※など、通常の業務では接することのない知識を習得する必要もありました。
※食品製造の際、入荷から出荷までの食中毒菌汚染や異物混入などのリスクを管理する手法

未解決の問題を放置することは、後々大きな問題になる可能性があることを認識していたため、遠慮せずに疑問が生じたらすぐさま先輩、上司、同僚、また協力業者に相談する姿勢を大切にしました。

さらに、多岐にわたるチームを一つにまとめるためには、リーダーシップ力も求められました。意見の相違や困難な状況に直面しながらも、上司のサポートを受けながらプロジェクトを推進しました。上司は細かく意見することはなく、任せるというスタンスをたえず保ち、私を信頼してくれていました。

時には難しい立場に立たされることもありましたが、一つひとつ解決することで、次第に大きな達成感と楽しさに変わりました。チームメンバーのそれぞれの個性と専門知識を活かし、最終的には共通の目標に向かって進むことができたのも、皆が同じ方向を見ていたからではないでしょうか。

このプロジェクトでは、新しい業者との関係構築も非常に重要で、特に基礎工事を担当する業者との緊密な協力が、プロジェクトの成功に大いに貢献しました。

困難な挑戦に日々直面しながらも、家族の愛と友情の絆に支えられた日常生活。
静岡の自然に囲まれて過ごす休日は、また翌週から始まる仕事を乗り越える力となった。

盛永:
忙しい日々の中でのストレスは、家族や友人との時間、特に妻の支えによって癒されました。二人で美しい静岡の自然の中で過ごす休日はリフレッシュにもなり、次の一週間のエネルギーを充実させる絶好の機会でした。学生時代にサッカーの部活で養った体力と、鍛えられたストレス耐性も大いに役立ちました。友人からのアドバイスやチームメンバーからのサポートにより、プロジェクトをより効率的に進める方法を見つけることも多く、その支えに感謝しています。

佐野ファームの理想を形にした「森町ラボラトリー」。
着工からわずか5カ月で完成。

森町ラボラトリーは当初の予定どおり5カ月で完成。
環境負荷を低減、耐震性も高く、太陽の光を活用して省エネまでも叶えた。
この明るく快適な室間は社員の結束を深め、地域社会との交流を育むスペースとしても機能する。

盛永:
終盤には、一丸となったチームと佐野ファーム様の熱意溢れる連携が、このプロジェクトを勝利へと導く鍵となり、森町ラボラトリーは当初の要望通りに着工からわずか5カ月で完工。また、建物には膜材を活用することで、一般的な建築物に比べてコンクリートなどの使用量を大幅に減らし、環境への負荷を低減。軽量な素材構成により、耐震性の強い建物を実現し、地震に対する安全性も高め、安心してご利用いただける施設となりました。さらに、テント状の屋根を導入し、太陽の光を取り込むことが可能に。これにより、日中の照明が必要ないほど明るい室内になり、電力消費の削減に繋がりました。

建物が完成した瞬間はやはり感動しました。でも、もっとグッときたのは、「かっこいい建物が完成して嬉しい」と言うご息女の近くにいた、社長と専務の表情を見たときです。すべての苦労が報われた、そんな瞬間でした。心から感謝の気持ちが湧きました。 私としても経験のないプロジェクトだったので不安な日々で逃げ出したいと思ったほどでしたが、希望に満ち溢れている皆さんの姿を見て、自分にも自信が芽生えた感じがしました。

佐野ファーム様との関係は建物の完成後も続いています。畑の中に突然完成したこの光溢れる空間は、道行く人からも注目され、町のうわさに。単なる食品加工場の機能にとどまらず、将来的には、社員同士の絆を深めるとともに、外部からの来訪者とのコミュニケーションを育むための場として、カフェスペースを設ける計画もあります。また、地域社会とのつながりを深め、新しい魅力を創造するために、ワークショップや料理教室などのイベントが今後予定されています。佐野ファーム様と地域コミュニティとの更なる結びつきになりそうです。

今回のプロジェクトを通じて形成された絆と協力関係は、私たちにとってかけがえのない財産になりました。私たちは新たな挑戦への自信と意欲を深め、太陽工業の未来を明るく照らす一歩を踏み出すことができました。このプロジェクトは私たちにとって、新たな始まりの象徴ではないでしょうか。

  • TOP>
  • MakMaxプラス>
  • 膜屋根がつくる、新しい農業施設コミュニティ施設としても機能する街のランドマーク「森町ラボラトリー」。