太陽工業コラム

世界中の注目が集まる国際的なスポーツ大会。その舞台となるスタジアムは、スポーツ観戦にとどまらず、都市の交流拠点としての役割も求められるようになっています。
スタジアム建築において、屋根は雨や風をしのぐだけでなく、観戦環境の質や空間体験を左右する重要な要素です。大空間を実現する構造や建材のひとつとして、「膜構造」や「膜屋根」は国内外のスタジアムで採用されています。
太陽工業グループは、こうした膜構造を核に、国内外のスタジアム建築に数多く携わってきました。
本コラムでは、当社が関わったスタジアム事例をもとに、膜構造が果たす役割とその特長について紹介します。

AT&Tスタジアム(米国・アーリントン)
大空間を支える膜構造という選択
膜構造は、軽量な材料を用いることで構造全体にかかる負荷を抑えながら、大スパンの無柱空間を実現できる構造です。特にスタジアム屋根においては、視界を遮る柱を最小限に抑えられるため、多くの観客にとって良好な観戦環境を提供することが可能となります。軽量であることから、開閉機構への負荷を低減することが可能となり、開閉式のスタジアム屋根など、可動構造との相性にも優れています。
こうした特長は、スタジアムの使われ方の変化とも密接に関係しています。スタジアムは、スポーツ観戦にとどまらず、コンサートやイベントなど多目的に活用される施設としての役割も担っています。こうした用途の広がりに対応するなかで、大空間を確保しつつ柔軟に空間をコントロールできる構造が活用されています。
また、膜構造は柔軟な材料特性を活かすことで自由度の高い形状設計が可能であり、スタジアムの象徴的な外観デザインにも寄与します。都市のランドマークとしての役割を担うスタジアムにおいて、その意匠性は重要な価値の一つです。
透光性が生み出す開放感と快適性
自然光を活かした明るい空間
膜材の大きな特長の一つが、自然光を柔らかく取り込む透光性です。
スタジアム屋根として膜を採用することで、日中は自然光を活用した明るい空間を維持でき、照明にかかるエネルギーの低減にもつながります。
観戦環境を高める光のコントロール
膜材は光を拡散する特性を持つため、まぶしさを抑えつつ均一な明るさを確保します。これにより、観客にとって快適な視環境が実現され、スタジアム全体の体験価値向上に寄与します。
スタジアム事例に見る膜構造の広がり
NRGスタジアム(ヒューストン・スタジアム)


2002年の完成当時、世界で初めて開閉式屋根を備えた NFL スタジアムとして注目を集めました。当社の米国現地法人Birdair Inc.は完成時および2025年より実施されている改修の双方に関与しています。完成から20年以上を経て実施されている今回の改修工事では、軽量で耐久性や防汚性に優れたPTFEガラス繊維膜の張替えが進められています。
AT&Tスタジアム(ダラス・スタジアム)


世界最長規模の開閉式屋根に加え、光触媒機能を備えた膜材を採用。これにより、付着した汚れを分解し、雨水で流すセルフクリーニング機能を持つため外観の美観維持と透光性の確保を両立し、大規模施設におけるメンテナンス性の向上にも寄与しています。
メルセデス・ベンツ・スタジアム(アトランタ・スタジアム)


カメラのレンズシャッターのように開閉する8枚の羽根から構成された屋根には3層ETFEフィルム、壁面ファサードには単層の透明ETFEフィルムが採用されています。ETFEフィルム膜材は高い透光性を持ち、自然光をスタジアム内に十分取り込むことができます。
メットライフ・スタジアム(ニューヨーク/ニュージャージー・スタジアム)

上層デッキのコンコースには、耐久性・防汚性に優れたPTFEガラス繊維膜を使用したキャノピーが北・南2か所に設置され、来場者を雨や日差しから守っています。
設計・製造・施工までを支える総合技術
膜構造を成立させる一貫体制
膜構造建築は、材料だけでなく、形状設計や構造解析、施工精度が密接に関連する高度な分野です。太陽工業グループは、設計から施工までを一貫して担う体制により、安定した品質の提供を実現しています。
蓄積されたノウハウと技術開発
長年の施工実績を通じて蓄積された知見に基づき、用途や環境に応じた最適な膜材料の選定や、新たな機能開発にも取り組んでいます。
まとめ―膜構造が切り拓く大空間建築の未来
スタジアム建築における膜構造は、軽量性・透光性・意匠性を兼ね備えた技術として、大空間建築の可能性を広げています。
太陽工業グループは、膜構造技術を通じて、今後も世界各地のスタジアムや大型施設における空間づくりに貢献していきます。
関連コラム
「Estadio Metropolitano」の改修工事を手がけた太陽工業ヨーロッパ。国王が観戦するなか、約束の日にキックオフ。 | 太陽工業株式会社






